京友禅 墨流し染め内装の、多機能アタッシュケース

hamaguchi-model

仕様:
・本体内部は桐枠
・牛ヌメ革素あげ白ヌメ
(1.5mm厚)
・外側縫い糸は同系色
(白地)総手縫い
・真鍮色金具
・内寸は464W-324T-90(桐箱内寸陰胴含まず:
 外寸約490-350-105)
・amietダイヤル鍵
・底鋲
内部の仕様:
・内側支給生地
・フタ内側を隠す着脱式
 仕切板(底部分ロック式
 ホック留め、上部ひねり
 金具)
 仕切板:片面はベルクロ
 縫付け、反対面は支給生
 地貼り
・着脱式荷物押さえ用の
 Dリング(6カ所)
・内側にヌメ革/焼き印にて
 タグ付け

最初のお便りは2011年4月20日に届きました。
匠乃固鞄 門田様
はじめまして、Hamaguchiと申します。
自分にとって使いやすい仕様のトランクが欲しいと思って調べていたところ、
門田様のwebサイトに辿り着き、いろいろと拝見させていただきました。
もし門田様のご都合が良ければ、
4/23(土)の15時半ごろ、そちらに訪問させていただけませんでしょうか。

それから2年と3ヶ月、ご来社2回、京都の
墨流し染め作家さんのところへ一度ご一緒し、完成してお渡ししたのは2013年8月に入ってからでした。

縫い糸は、日焼けした後のことも想定し、素あげヌメ革(無着色なので変色が大きい)に数種類の色と太さの糸を縫い付け、それを送って日焼けの実験をして頂き決めたものです。

全体がシンプルでシャープなイメージなので、金具のフォルムやエッジ(角部分)の削り方までこだわり、
金具選びに侃々諤々(イタリア製の金具で手仕上げのため、いとつひとつのエッジの表情が違い、また最近輸入元が変わったため、なかなかストックのなかから個別に選んだりをしてもらえないのです)。

途中で「金具すべてを真鍮に。見つかるまで作業停止」ということもあり一時は「金具もオリジナル製作?」という感じでしたが「鍵はいずれ壊れるので、その時に再度オリジナル製作が必要になる」ということであるものの中を探した所、エッジの立った鍵があり、ようやく完成に至りました。

内装生地は、この鞄用に特別に染められた生地です。
墨流し染め作家の小川創右衛門氏の所へご一緒し、鞄の構想や必要な部分のサイズなどをお伝えして作られたものが上の内装生地です。

写真上はフタの内側、写真下は仕切り板を取付けた状態です。水の流れを表現した模様は、仕切り板の隙間からのぞくフタの内側の生地と、きれいに重なり、また、鞄の本体内部の模様ともつながっています。

普段、iPadなどのガジェットを持ち運ぶことが多いということで、フタの内側に仕切り板で隠すようにガジェット取付けられるようになっています。

取付けているときは、ふたを開けても電子機器は見えずに、友禅の模様が表に出ます。
仕切り板上部のひねり金具を外すと、仕切り板の内側にマジックテープで取付けられるようになっています。
このマジックテープの取付けも、数種類の取付け間隔/テープ幅の違うサンプルを準備し、その中で選んで頂きました。

また、仕切り板自体もボトム部分でドットボタンで取り外しが出来ます。

フタ内側の左下に、焼印革タグが付けられています。
これもデザインは小川創右衛門氏で、取付ける位置まで細かく決められています。
外観のデザインは、ヨーロッパのオーソドックスなトランクのデザインを取り入れ、縦横のサイズ比は日本で伝統的に良く使われる白銀比(1:1.414)を用いてサイズを決めました。(斜めの写真で分かりにくいですが)

終わりに

今回の鞄製作プロジェクトは、ご依頼主、匠乃トランク、小川創右衛門氏、トランク製作職人と、それぞれの役割に分かれ、2年4ヶ月の期間で完成に至りました。2012年1月からはfacebook上にプロジェクトページが作られ、画像やその時々のやり取りを皆で共有しながら進められました。

2013年8月に、製作に関するプロジェクトは完了しましたが、トランクとしてはようやくこの世に誕生したところです。これからこのトランクが日に焼かれ、雨の染みや傷も付いて、どのように成長していくのか?

どこで誰が使っているのか? 

50年後、100年後のトランクを想像してしまいます。

プロジェクトに関わりました皆様、本当にご苦労様でした。素晴らしい鞄が誕生して感謝です。

 2014年 匠乃トランク 門田真

ガルウイング(両開き)アタッシュケース

hayashi-model

仕様:
・Type-A 両開き
・本体内部は桐枠
・牛ヌメ革素あげ白ヌメ
・外側縫い糸は同系色
・真鍮色金具
・内寸は400W-280T-120
・ドイツ製プッシュ鍵
・着脱式ショルダーベルト
・底鋲
内部の仕様:
・エンジ色綿生地
・フタ内側ポケット
・仕切板:
・着脱式荷物ベルト
・内側にヌメ革/焼き印にて
 タグ付け

最初のお便りは2013年10月2日に届きました。

匠乃固鞄 門田様

お世話になります。
アタッシュケースA-type(450-350120)で白ヌメ革、ショルダーストラップ、ポケットは基本型、金芯把手B、ストッパーB、内部に着脱式ベルト、ショルダーストラップの仕様での購入をイメージしています。大凡の見積りは頂けますでしょうか?

内装に関しての本心はMATSUO MODELの様なスタイルに憧れがあります。もしもこの内装仕様にした場合の見積りも頂ければ幸いです。

尚、ショルダーストラップは二種ありますが、写真がありましたら拝見したいです。手前の希望のみ書いてしまい、失礼な事とは思いますが、ご回答の程御願い申し上げます。

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それから2通のメールで、大きくデザイン変更がありました。

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昨日、お返事を頂いてから随分と悩んでおります。

大きく仕様を変更することも視野に何点か相談をさせて下さい。

ガルウィングタイプについて
パラパラカタログにあるCHIBA MODELの様なガルウィングにすると加算価格は如何程ですか?

ガルウィングが実現したとして・・・
片側は30度開閉にし、ストッパーCを深くしたようなサイドカバーを両サイドに付けて、横から落ちない様にしたいです。奥行は収納したい手帳に合わせ40mm。こちら側全体が大きなポケットになりますので内部にポケットは設置しません。

反対側は30度と90度の2段式開閉、ご紹介頂いたストッパーAの様な金属タイプを考えていますが、これは鞄を縦にすると30度、寝かせると90度開きになるものですか?(ネットで2段式ステイという名でそのような品を見ました。)

蓋側には基本形のポケットを設置、モバイルPCを収納します。飛び出し防止に中央に一本留め具が欲しいです。ポケットの幅は350mmでお願いします。

蓋と反対側の内部に脱着式のベルトを付けます。主に出張先での一泊分の着替えを固定します。
内部色はエンジ、革製ショルダーストラップ、把手仕様はそのままでお願いします。

ところでガルウィングタイプにすると少なからず内部の固定板の分、奥行が狭くなると思います。
現在奥行100mmを考えていますが、120mmにしてはどうかと悩んでおります。
その分、高さを300mmから280mmに下げた場合、外観のバランスは変ではないでしょうか?
アドバイス頂ければ幸いです。

またドイツ製の錠ですが、ベロの様な取手が有る写真と無い写真があります。
これはどのような形状をしているのでしょうか?
できれば見えない(無い)様にしたいです。



 もともとType-Aは、ボタンの頭だけが表に出るドイツ製のプッシュ式錠前を使い、出来るだけシンプルな外観を考えてデザインされた物でした。
 今回の仕様はType-Aを基本として、ガルウイング(両開き)タイプにするため片側に錠前2つ、もう片側には錠前1つ付けられ、それにショルダーストラップ取付用の金具を革フラップで隠しています。
 錠前の数が違うのは、どちらの面か分かりやすくするためと、よく開閉されるポケットになる方は、片手で簡単に開けやすいように錠前1つ、PCなど何かの拍子に急に蓋が開いて落ちたら困る物は錠前2つの方と分けるためです。
 外装の皮革は、牛ヌメ革の素上げ生成り色という全く着色をしていない、皮革の表情が一番分かりやすい物で、出来上がったときは赤ちゃんの肌のような繊細な美しさがあり、また、日焼けや水シミ、手の脂による変色で、使い始めたときからどんどんエイジングが進んでいく皮革です。
 5年、10年と経てば、かなり色も濃くなり、30年もすれば飴色に近い濃さまで成長していきます。

 内装生地は、エンジ色の生地を使っています。
本体内には取り外し出来るベルトと、出張時に中へ入れる日用品などを隠す中仕切板がつけられています。
 ポケットの内側にはノートPCを収納するためのポケットがつき、飛び出さないようホック付ベルトがつけられています。
 両脇につけられたフタを留める金具は、30度と90度強で二段階に留まるストッパーで、把手が上にある(持っている状態)ときは、30度で止まりますので、誤って開いたとしても中身がこぼれ落ちることはありません。
「尚、タグの件ですが私の座右の銘を入れて頂くことは可能でしょうか。
『The greatest pleasure in life is doing what people say you cannot do.』です。
 その下に名前『M.Hayashi』と『製造年月日』」

 ご希望通りの文字が焼印で入れられました。
何十年と経つごとに、段々と文字の色が濃くなり鮮明になってくることでしょう。
 もう片面は、30度の開度で留まるように、また、中の物がこぼれないように内装と同じ生地で作られた
フタ留めがついています。このフタ留めは、ホックボタンで取り外しが出来るようになっています。

無事納品

お世話になります。HAYASHIです。鞄は本日到着しました。

納品日を早めて頂き、本当にありがとうございました。
幼い頃の誕生日とクリスマスのプレゼントを同時に貰った時のような昂揚感に今、包まれています。
(今回は自分で買ったものではありますが・・・)

実は先程帰宅しまして、まだ開封しておりません。
ゆっくりとこれから開けたいと思います。

まだ年内の仕事もありますので、使用した感想は年中に追ってご連絡致します。

まずは謝意をお伝え致したく、ご連絡致しました。
本当にありがとうございました。

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 2013年12月24日、無事にクリスマスに間に合いました。
今回は10月2日のお問合せから、仕様の決定と本受注が10月15日。

通常は本受注後約90日とお伝えしているところ、途中の作業がはかどり職人さんより「年内に仕上げられる」との連絡が入りました。では、なんとかクリスマスに間に合わせられないかと段取りをしていただき、無事にクリスマスイブにお届けすることが出来ました。

 では、末永くご愛顧のほど、宜しくお願いいたします。

2013年12月
匠乃固鞄  門田 真

アフリカ大陸の冒険をイメージしたトランク

tamegai-model

サイズ外寸(内寸)
中折れトランクに準ず
横:475mm(455)
高:345mm(330)
幅:190mm(170)+約35(30)mm、幅は内寸30mm分のフタ
外ポケット構造による余裕を含む
本体:クーズー支給革
パーツ:真鍮
亜鉛金メッキ金具
    獅子バックル
内部:コットンツイル グリーン生地貼り
ポケット/フタ内側ゴム口、
本体両サイドゴム口ポケット
荷物押さえベルト付き

付属:獅子バックル/マグネット付バックル
本体正面から向かって左側面に伸縮把手/対面に底鋲
ネームホルダー

 ベースのモデルは蛇腹(中折れ)タイプでしたので、本体側はボール芯にクーズーの革巻きです。
把手は縦横の二方向に取付けられ、それぞれ対面には底鋲がつきます。
一番の特徴は、フタが二重にオープンするようになっている部分。このため、フタの内側は木枠で製作してあります。第一のフタは、30度の角度で開くポケットとなっており、ライオンの顔の裏にマグネットホックが付いていてこれで留められます。

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こちらも構想からお届けまでに一年以上を費やした渾身のモデルです。
2012年末、京都の代理店クエルクス無二店より「これまでにない変わったトランクを作りたい方がおられる」という連絡をいただきました。
変わったと言っても、形が変わっているのか、素材が変わっているのか、それをトランクとしてどのように作り上げるのか、やり取りを続け、「昔のトランクで使われていたような、ひだの大きいクロコダイル」・・・これはワシントン条約で、クロコダイルは養殖の物しか手に入らないので難しい。

形は、蛇腹タイプにするとか、キャリーを取付けるとか、外側にベルトは付けないなど色々な意見のやりとりがあり、工場とも相談しながら2013年2月に、蛇腹タイプをベースにして使用する皮革はクーズーというアフリカに住む野生の鹿革を使うということで最初の仕様書が作られました。

それからも2度3度と仕様の変更を重ね、クーズーに合わせて同じアフリカの草原に住むライオンの顔のオブジェを付けることが決まり、そこからライオンの顔を作ってくれる業者を捜して交渉を重ね、最終の仕様書がまとまったのが2013年11月でした。

完成したのが上のモデルです。

内装生地は、濃いグリーンの生地です。
クーズーの革、ライオンの顔、草原の緑ということで、アフリカ大陸の冒険をイメージして作られたトランクになりました。
第二のフタを開くと本体側のメイン収納部分があらわれます。
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内部はいたってシンプル。
荷物押さえのためのベルトが二本、両サイドとフタの内側にゴム口のポケットがあります。
中に入れてあるのは、オーナー様の名前をロゴで焼印したネームタグとキークロシェット(鍵ケース)。
オリジナルで製作されたライオンの顔のパーツです。睨みを利かしています。
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無事納品

 2014年2月、無事に完成して納品いたしました。

「革は出来るだけアットランダムに色が出るように」とか、なかなか普通には見かけないような鞄をお望みでしたので、楽しくやらせていただきました。

Youtubeでも鞄の様子をご覧いただけますので、良ければこちらもご覧下さい。

2014年2月
匠乃固鞄  門田 真